引き続き、KDP(キンドルダイレクトパブリッシング)の話である。
KDP
https://kdp.amazon.co.jp/
前回、『流しの仕事術』の印刷用データを電子書籍のリフロー形式に変換する必要があると書いた。
で、KDPのリフロー形式の入稿ファイル形式について調べてみたところ、一番上に載っているのが、なんとあの
Wordなのである。
https://kdp.amazon.co.jp/help?topicId=A14LJ3QNDNO64G
一番上にWordとあり、

さらに最下部にはPDFはNG的なことが書いてあるのだ。

これは紙の出版をやってきた人にとっては驚愕の入稿スタイルだと思う。
通常、現在の紙の印刷の場合、印刷所にはInDesignデータとPDFデータの2つを入稿する。もっとアナログで言えば、紙の版下(要はプリントアウトした紙)を出して、それを写真のように撮って印刷することもある。
僕は前職のときに版下がメインだったので大変だった。なぜ版下が大変かと言えば、版下の紙に汚れがついていると、印刷物にもそのまんま汚れが出てしまうからだ。しかも刷り部数全てに。
だから、印刷所へ入れる前に目の玉が飛び出るぐらい注意して1枚1枚チェックしていた(本当の話)。本だから1冊200~300ページあるので、毎回200~300枚チェックするわけである。
僕が独立してから出した2冊は両方データ入稿だったが、それにしても電子書籍の入稿ファイルがWordとは凄い。
ぶっちゃけて言えば、紙の印刷でもWordでトンボを付けて印刷所に出せば(版下にして)、印刷できないこともないだろう。
でも、一般的にWordは出版のプロが印刷所への入稿ファイルとして使うものではない。
フォントが素人くさいし、行間や文字間も全く揃わないなどデザイン性が低いからだ。
では、「なぜ電子書籍でWordが推奨入稿ファイル形式か?」と言えば、昨日のブログにも書いた通り、電子書籍は読み手が文字の大きさやフォントを自在に変えられて、それによって改行位置などが変わってしまうので、デザインの入り込む余地が紙の出版に比べて圧倒的に少ないからである。
つまり、電子書籍 = シンプルなテキスト + 絵(図、表)で成り立っているのだ。
わかりやすく言えば、紙の出版データからレイアウトなどのデザインという要素を引いたものとも言える(紙の出版データ - デザイン = 電子書籍)。
シンプルなテキストだから、「Word推奨」となるわけですね。
こうやって電子書籍のことを調べていたら、僕が昨年末に書いたブログのことを思い出した。こちらである。
「出版不況」というニュースに思うこと 出版社は紙屋なのか?
http://blog.daikanyamabooks.com/archives/1048650947.html
そして2015年の終わりの今思うことは紙の本がなくなったって出版社は食えるはずだということである。なぜなら、出版社は紙屋ではないからである。出版社の仕事は、文章または絵を表現手段としたコンテンツの販売である。少なくとも僕の定義はこうだ。どう見ても、何回読んでも、この定義に「紙」という媒体名は入ってこない。だから、極論すると紙がこの世からなくなったって出版社はやっていけるはずである。だって、紙のない昔は石や竹に文字を刻んだり、書いたりして、それを本の代わりにしていたのだから。紙がなくなれば、他の媒体が生まれる。それが今はPCやスマホなだけである。
ここにも書いた通り、印刷技術がなかった大昔の本は、誰かが書いたものを自分も家で読みたい、または欲しいので、書き写していたと聞く。
その際、1行の文字数やレイアウトが元本と同じか、なんて気にしなかっただろうし(持っている紙が少なければ、できるだけ凝縮して写したはずだ)、それで全く問題なかったのである。
つまり、「本の本質」以外のものを削ぎ落としていくと(原始的な形に戻していくと)、電子書籍のそれの如く、「シンプルなテキスト+絵(図、表)」が残るのだ。(削がれるものはレイアウトやフォントなどの「デザイン」)
僕の定義では、その本質こそ「出版社が売るべきもの」である。
今回、電子書籍に取り組んだことで、紙とか、電子書籍とか関係なく、「本の本質」はやっぱりここにあると自分の中で再確認することができた。
一応言っておくと、デザインが本にとって余計なものということではない。
紙の本にとってデザインは「本質をよりよく見せる、または際立たせるためのメイク、スタイリング」といったイメージだろうか(ちょっと違うかな)。
何はともあれ、僕は電子書籍の勉強をはじめて本当によかった。これを再確認できただけでも大きな意味があった。
もちろん、ちゃんと出すけどね。電子書籍版『流しの仕事術』の刊行目標は今月中です。
悪戦苦闘の日々は続いているので、それはまた次回・・・。
こちらもぜひ見てみてください!
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